丘陵に囲まれた多治見・市之倉町の窯元「仙太郎窯」
岐阜県・市之倉町の丘陵に囲まれた仙太郎窯
岐阜県・多治見の集落・市之倉町にある「仙太郎窯」は、明治初期の創業以来、四代にわたってやきものをつくり続けてきた窯元です。
この地は、桃山時代から「桃山陶」と呼ばれる焼き物文化が息づく土地。志野、織部、黄瀬戸といったやきものが受け継がれ、仙太郎窯でもその伝統の技を生かした作品づくりが行われています。
土と釉薬が生む、志野焼の色
自ら山を歩いて土を採り、化粧土や釉薬まで全て地域の素材でまかなうーー。仙太郎窯では、そんな土地とともに生きるものづくりを今も大切に継承しています。
中でも、古くからこの地で焼かれてきた志野焼は、仙太郎窯を象徴するやきものの一つ。素朴でありながら深みのある色合いと、やわらかな質感が魅力です。
生地と釉薬の間に塗布する「化粧土(けしょうど)」
一般的な磁器は釉薬そのもので色をつけますが、志野焼では成形した生地と釉薬の間に塗布する化粧土(けしょうど)によって発色が生まれるのが特徴です。
仙太郎窯の志野焼は、地域の山から採取した百草土(もぐさつち)をベースに形をつくります。
地域の山から採取した百草土(もぐさつち)で成形
黄土(おうど)
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赤楽(あからく)
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その上から、黄土(おうど)や赤楽(あからく)という土を粉にして水で溶いた化粧土をかけ、後に桃色や青灰色に発色するベースをつくり、素焼きの工程へ。
最後に、滋賀県で採れる長石(ちょうせき)を用いた共通の釉薬を重ねて焼き上げると、表面に現れるのは、志野焼ならではの包み込むような白く艶のあるやわらかな質感。
焼成温度はおよそ1100度。ゆっくり冷ます過程で現れる赤み(緋色)が、アクセントとなり、より一層あたたかな風合いを生み出します。
窯の大きさや置き場所、火の回り方によっても色の出方が異なるため、二つとして同じ色合いはありません。どんな景色に出会えるかは、窯を開ける瞬間までのお楽しみです。
志野焼「四角」
仙太郎窯の三代目の孫娘・瀧下まりさんによる制作
志野焼「四角」を手がけているのは、仙太郎窯の三代目の孫娘、瀧下まりさん。普段は建築家として活動をしながら、ご自身の手で数多くの作品を生み出されています。
直線の中にやわらかな丸みを宿したフォルムと、やさしく滲む色合いのグラデーション。女性らしい感性が息づく、静かで穏やかな表情が特徴です。
紅志野(桃色)
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鼠志野(青灰色)
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白に重ねた紅志野はほのかな桃色、鼠志野は静かで渋みを帯びた青灰色
手触りや光のあたり方、釉薬の濃淡や滲み。
その一つ一つが、箸置ごとに異なる表情を見せてくれます。
わずかな大きさの違いにも、土の個性や手仕事ならではの味わいが感じられます。
手のひらにそっと乗せると、土のぬくもりとともに、作り手のやさしさまで感じられるような作品です。
自然と手仕事が生み出す、やさしい美しさ
どれも少しずつ形や色が異なるのは、土と向き合いながら一つ一つ形をつくり、炎の表情を見極めて焼き上げているからこそ。
小さな中にも個性と愛らしさが宿る箸置を、ぜひみなさんの食卓にもお迎えください。