緑・赤・黄・黒。色とりどりの漆を覆う、やわらかな白。
ドットやストライプを思わせるモダンなパターンが、白の縁取りによって浮かび上がります。この箸を彩る白の正体は、卵のから・卵殻（らんかく）。

実はこの縁取り模様、伝統的な若狭塗の技法により表現しています。
長く日の目を見ることのなかった技法を職人とともに探求し、新たな若狭塗の美しさを拓くプロダクト「rankak」。
構想から2年以上の歳月を経て、いま誕生しました。

若狭塗は16世紀後半（江戸時代）に小浜藩の御用塗師が“若狭湾の海底の様子”を模写したところから生まれた伝統工芸品。
貝殻・卵殻・松葉など、自然素材を用いて表現される美しい模様、漆を塗り重ねて生まれる堅牢さが魅力です。
塗箸産業も、用と美を兼ね備えた若狭塗の特性を活かして始まった産業です。

若狭塗の模様にはいくつも種類があり、マツ勘で代々保管されている模様帳には200を超える伝統模様が記されています。しかし、現在流通している柄は見渡してもわずか数種類。多くの模様は、技術として継承されることなく、産地から姿を消そうとしていました。

今回目をつけたのは、長年日の目を見ず、継承されてこなかった「抜き模様」という伝統模様。漆の上に置いた松葉や生糸、菜種などの素材の形を、細かな卵殻で表現する珍しい技法です。

この「抜き模様」、素材となる松葉や菜種を漆を塗った箸の上に一つ一つ手作業で置き、バランスを見ながら位置を調整して模様を作るんです！
それから漆を塗って乾かして…研いで塗って乾かして…を繰り返します。木地を整えるところから完成まで、製作にかかる時間はなんと約９ヶ月！

すぐ届く、すぐ作れる、すぐ食べられる。“速い＝良い“がスタンダードになりつつある時代に、漆などの自然物と向き合いながらゆっくりと時間をかけて、丁寧に作られるものの尊さを感じていただけると思います。

今回ものづくりを担当してくださったのは、「古川若狭塗店」の塗師・古川勝彦さん。
塗箸メーカーとともに新商品を作り上げることも、箸に抜き模様を施すのも、職人経験の中で初めてのこと。
何度も古川さんの工房にお邪魔し、制作方法や、古川さんだからこそ表現できる美しい模様、お客様が“暮らしに取り入れたい！”と思ってくださるようなデザインについて2年以上に渡り話し合い、歩んできました。

伝統的な若狭塗箸も素敵ですが、豪華すぎて普段使いは躊躇ってしまうという声をよく耳にします。
rankakは日常に若狭塗の美しさを取り入れていただくため、細部まで工夫を施しました。

まず色。
伝統的なものは黒や赤の漆のものや、金箔の透ける起こし模様のものが主流ですが、rankakは緑・赤・黄色・黒の4色展開。もちろん、これらはすべて天然漆の色です。

漆を施した持ち手部のうち、１面だけ「抜き模様」を施しています。
ヘリンボーン模様のようなmatsuba（松葉・緑）、
ストライプ模様のようなito（生糸・赤）、
ドット模様のようなnatane（菜種・黄色）、
降り積もる雪のようなyuki（雪・黒）。
どれも機械では生み出せない、手仕事ならではの温かみのある模様に仕上がっています。

他の３面には細かい螺鈿細工を。絶妙な塩梅で螺鈿をまぶしてあるので、ふとした瞬間に虹色に輝き、とても上品です。

箸先はあえて竹木地を残してカジュアルな印象に。
竹は日本でも有数の竹の産地・京都府産のものを使用しています。京都の竹は繊維の密度が細かく詰まっているので、魚の身をほぐしたり、ハンバーグなどの固いものをお皿の上で切り分けたりするときにも“ぐにゃん”としならずしっかりとしているのが特徴。魚の骨取りなどもしやすいよう、箸先端3mmほどはさらに細く加工してあり、細かな作業もしやすい作りです。

長さは男女問わずお使いいだける23.5cm。
女性の一般的な箸（21.5cm〜22.5cm）より少し長めの作りですが、細いので普段短い箸をお使いの方でも持ち心地よくお使いただけます。
また、華奢なので手元を美しく見せてくれるといううれしい魅力も！
お好みの模様や色から一膳お選びくださいね。
 

特別な一膳を、もっとカジュアルに。毎日の食卓を、もっと特別に。